埼玉里親会

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2021年11月09日

11月9日 ゆずりは研修会 里子の発達障害への理解と対応

講師紹介 武蔵野大学心理臨床センター 主任相談員 上原 由紀
2008年から現在に至るまで埼玉県中央児童相談所および武蔵野大学心理臨床センター子ども相談部門にて勤務
2 0 1 7 年同大学院にて「不適切な養育環境を経験した子どもとその保護者に対する親子相互交流療法(PCIT)の有効性に関する記述研究」で博士号取得。
現在、同大学非常勤講師
臨床心理士、公認心理士

みなさんにお伝えしたいことを抜粋しました!

発達障害って? こんな友達いませんでしたか?
・おしゃべりが止まらず、次から次へと話が変わる子
・考えるより先に体が動き、ケガをしやすく、うっかり物を壊してしまう子
・皮肉が通じず、理屈っぽく、ロボットのような委員長タイプ
発達障害はサポートをしやすいように、『暫定的に』作られた基準によって診断されます。『日常に支障をきたしている』ことが診断基準の1つとなります。文化の違いで、支障になることも、ならないこともあります。
例えば米国では、授業の途中で意見や内容に関する会話をすることが認められる文化があります。発達障害という線引きが、個性を認めない社会や差別に繋がってしまう可能性があると、危惧する専門家たちもいます。

発達障害の分類「DSM-5」
・自閉症スペクトラム障害
・自閉スペクトラム症(ASD)
・注意欠陥・多動性障害
・注意欠陥・多動性症(AD/HD

「広汎性発達障害(PDD)はDSM-5で自閉症スペクトラム障害ASD)に再編)されています。
*スペクトラムとは「連続している」という意味です。重なり合うように発達特性が出るため、症状は人により様々です。

特性を含めて受け入れる
その子の言動を観察し、その場で対処しながら理解を深め、謎解きできるのは養育者だけです。発達障害をなんとかしようと思わず、特性によって生じた困難さをどう解決するかを考えましょう。「可愛い、可愛い」と言ってくれる人たちに触れる機会をつくることも大切です。いつも…というわけにはいかないかもしれませんが、発達特性をおもしろがれるようになれば子育てを楽しむプロになれるかも?(^ー^)

今日からチャレンジしてみよう
指示と結果
やって欲しいことをわかりやすく伝えます。「走らないで」→「歩いて・止まって・隣に来て」
「○○しないで」は、精神的に否定されたように感じます。「静かなところで遊ぶ?外に行く?」と選択肢を与えるのも有効です。
発達障害の子は、批判され傷つきがちなので、当たり前のことを褒めることが有効です。
人に認められている子は、人を認めようとする気持ちが出てきます。変化させたい行動は、積極的に大げさに、ジェスチャー(グッドポーズ・拍手など)をつけ、褒めることが大切です。
大人になってから先はその子自身が、どう対処するかを選択しなければならないのです。「自分の特徴を知って対応する力」が必要なので、「プリントはここに入れよう→忘れやすいから」「相手からイヤって言われたらやめよう→気持ちに気づくのが苦手だから」と理解できるように支援するのも大事です。

パニックへの対応
幼児のパニックは、抱っこ等で落ち着く事も多いです。幼児以降の一番の方法は「刺激を減らす(注意するのも刺激になります)」ことです。
必要であれば幼稚園・保育園・学校などにも一貫した対応をお願いしても良いかもしれません。
一貫した対応ができなくても、繰り返しやる事によって定着することもあります。

質疑応答
『現在5歳の(少し知的な遅れあり)を受託して3ヶ月』
【質問者】幼稚園に入園して何回かお弁当を作りましたが、子どもから「ママ上手にできないね」って言われます。今朝も子どもの要求のおかずを入れたら大喜びなんですが、自分で袋に入れたい気持ちを尊重して渡すと、振り回しぐちゃぐちゃです。
開いてみて「ママどうして上手にできないの?」って…悪気もないようです。お弁当が崩れてしまったので、他のお弁当箱を持ってきて、残っていたおかずを入れ直し振り回さない練習をしました。でも袋に入れたとたん、また振り回しました。で、また崩れたお弁当を持っていきました。根気よく待つってことですかね?
【講師】そうですね「お弁当を振るとぐちゃぐちゃになるね、残念だったね、振らずに持っていってね」と声をかけ、いつか思い出になると考えてやっていくといいと思います。お弁当を作ってから来たのですね、お疲れ様です。
【質問者】帰ってきたら「ママお上手にできませんでしたね」って言われるのですけど
【講師】経験するとわかるようになりますよ。
【質問者】幼稚園では、一日中しゃべり続けていて、子ども達から「静かにして下さい・しゃべらないでください」と言われ、辛い思いで帰ってきます。外を歩いていても車に興味がいくと走って行っていくので、手を離さないなど気を付けています。幼稚園ではみて頂けているのですけど、小学校は支援級なのか?普通のクラスは無理なのか?幼稚園の先生には知的に障害があることを伝えてます。
【講師】話せるっていうのは一つの能力です。封印してしまうと良さを消してしまうので、どこで話すべきか分かるようになるまでは、別室に行くとか。小学校もおそらく周りの子から同じ様に言われちゃうので、お家でよしよしをして、幼稚園ではちょっと頑張る(そのバランスと判断はとても難しいです)
トレーニングを。学校に行きたくなくなっちゃうようであれば頑張らせないこと(行かなくなると色んな機会が奪われてしまうので)。もし静かにできたらめちゃくちゃほめる。一日へとへとになって帰って来るので「幼稚園に行って偉かったね」と毎日ねぎらって励みにしていくといいと思います。⦆⦆
発達障害とか少し遅れを持つ子どもたちの母親が、一番最初にぶつかる壁は小学校です。小学校でなんとかさせるために家でもしつけしなければいけない等よく聞きます。
「大変だったね、よく一日頑張ったね」と言って貰える場所があって、本人がそこで頑張れるのであれば頑張らせる。
これ以上頑張らせると折れちゃうなと思うのであれば、先生と本気で今後の対応を相談しても良いかもです。

講習会会場の様子

皆さんの感想
・発達障害っていうラベルを張らなくてもその子の特徴とかどんな傷つきをしているか?というのを自分が理解していれば自分の養育もまた一歩いいものになるというヒントを得ました。(Hさん)
・「生活に支障はあるか」で判断をし成長を見守ることが大事だと理解いたしました。子どもと一緒に謎ときをするという考え方は参考になりました。(Aさん)
・実子、里子、発達障害の有無等、背景は違っても子育てや成長の節目で悩んだりつまずいたり、共感できることがたくさんあると思いました。(Kさん)
・養育している里親さんにとって、多くの人に知って理解してもらうことが、本当に大事なことだと思いました。(Fさん)

取材班の感想
先生は、専門家を活用することと、セルフケアの重要性を話されました。
余裕がないと考え方が狭まり、感情的な対応になってしまうことを心配されています。
私たち養育者も、子ども達の抱えている問題に寄り添い、個性を認め合えるような社会になって欲しいなと思いました。

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