情報コーナー

  里親制度に関連する、子どもを養育するうえで参考になる情報を提供いたします。

●レスパイト・ケア(里親の一時的な休息のための援助)について

ー埼玉県の場合ー 委託児童を養育している里親家庭が、一時的な休息のための援助を必要とする場合に、他の里親、乳児院、児童養護施設などを活用して子どもを預けることを、レスパイト・ケアと言います。援助の対象者はもちろん子どもを養育している里親です。実施施設に付いては、レスパイト・ケアの利用を希望する里親が養育している児童に対し、適切な処遇が確保される埼玉県内の里親家庭、乳児院、児童養護施設となります。
 
利用日数は年間7日以内で、利用者は、利用を希望する日の2週間前までに児童相談所に申請をします。ただし、緊急にレスパイト・ケアを利用する必要がある場合は、この限りではありません。申請書を受理した児童相談所は、受け入れ先の選定等を行い、決定後、レスパイト・ケアを希望する里親に、受け入れ決定通知を行います。
 
レスパイト・ケアを希望する里親は実施施設や里親に預ける際、児童の生活状況や嗜好などの情報を提供します。そしてレスパイト・ケアが終わったときには実施施設や里親は、児童の観察記録をレスパイト・ケアを希望した里親と児童相談所に提出します。 なお、里親が受け入れ先となった場合は、里親賠償責任保険に加入できます。
精神的に疲れたので一時休みたい、気分転換に旅行に行きたい、親族に不幸があったなど、レスパイト・ケアを希望する場合は、担当の児童相談所に相談してみましょう。  

●普通養子・特別養子について

◆ 里親制度と密接な関係があるものとして養子縁組制度があります。実際、一定期間里親として子どもを養育し、その後養子縁組するという里親も多く、里親希望者の7、8割が養子縁組希望者ともいわれています。
しかしながら、養育里親、養子縁組里親などその呼び方の問題もあり一部では混同されている場合があるようです。里親制度も養子縁組制度も、家庭で育つことができない子どもを自らの家庭において養育するという点では、子どもたちの福祉にとって大切な役割を担う制度ですが、里親制度は児童福祉法に規定される子どものための制度として、養子縁組制度は法律的に”親子関係を成立させる”民法上の制度として、それぞれの考え方に基づく別の制度です。
(注)養子縁組・特別養子縁組をするのに必ず里親登録が必要ということではありません。個人的に縁組を成立させる方もいますし、また養子縁組を斡旋している団体もあります。あくまでも里親が養育する子どもは、都道府県知事から養育の委託を受けた児童であり、法律的な親子関係はそこには存在しません。
   
◆ 養子縁組には「養子縁組」と「特別養子縁組」があります。「養子縁組」は養親と養子の当事者間の契約で成立する養親子関係(ただし、未成年者を養子にする場合は家庭裁判所の許可が必要)であり、「特別養子縁組」は、養親となる者の請求により、実父母及びその血族との親族関係が終了する養親子関係をいいます。  
 一般的な「養子縁組」は、明文上制限がなく非常に幅広い目的のために利用できる制度になっています。そのため、親としての責任や権利は養親に移りますが、一方で実親との親族関係(相続権や扶養の義務)が継続されることや戸籍上に「養子」と記載されること、あるいはいつでも離縁できることなど、場合によっては子どもの利益(子どもの福祉)にならないような点も見受けられます。
  その点、「特別養子縁組」は、「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であること、その他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があるとき(民法817条の7)」、つまり実の親に養育されるよりも養親に養育される方が子どもの福祉に適うと家庭裁判所が判断した場合成立が認められ、戸籍上も「子」として実子と変わりなく記載されることや、養親から離縁を申し出ることができないなど、いうなれば、より子どもの視点にたった養子縁組ということができます。なお、「特別養子縁組」の場合、未成熟の子を実子と同じように養育するという制度の趣旨から養子の年齢制限(原則6歳未満)が設けられています。
 

●愛着障害について

◆ 最近、児童虐待など子どもたちの抱える問題は複雑化・深刻化しています。また、RAD(反応性愛着障害)やADHD(注意欠陥多動障害)、LD(学習障害)など、養育に大きく影響する子どもの障害も知られるようになってきました。
特に、愛着の障害は、子ども健全な発達や子どもの心理や行動を理解する上で、里親養育においても中心的課題のひとつになっています(現実の問題として、幼児期に愛着形成ができず愛着に障害のある子どもたちを受託・養育する里親さんも多くみられます)。 一般的に愛着障害は、『・・・身体、知性、社会性の目覚しい発達を遂げる最初の1年は、赤ちゃんにとって大人への信頼を学ぶ大切な時期でもあります。赤ちゃんが自分の要求を泣くことで知らせ、親がその泣き声を聞き分けて、要求を的確に満たすこと-例えば授乳、抱いてあやす、オムツを替えるなど-で、満足感・幸福感を経験し、その人を信頼すること(愛着の絆)を学びます。泣いても放置されたり、複数の大人がいつも違った対応をすると、感情をつかさどる脳神経回路が強化されず、人間関係に無関心になり、良心や社会性が育ちにくくなることがあります。これがいわゆる愛着障害と呼ばれる症候群です・・・』(厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課監修「子どもを健やかに養育するために」から)、といわれています。
 
◆ 信頼感があるからこそ、子どもは親の価値観を自分のものとして、良心や倫理観などの社会性を育てることができるのです。幼児期の不適切な養育により愛着の絆が結ばれていない愛着障害は、子どもの人格を形成する上で大きな障害になります。
「自分のイライラや不満を抑える力」(衝動や刺激に対して自制が効かない、自分を傷つけたり物を壊すなど、「対人関係が築けない」(人を信頼しない、他人に対して共感や同情がもてない、あるいは見知らぬ他人にも恐怖心なく愛嬌を示すなど)ことなど、子どもたちにさまざまな問題行動をもたらします。
◆ 愛着の絆の発達は、的確な時期を逃がすと修復に長い時間と大きな努力が必要になります。一対一で子どもの生理的・心理的発達に沿った子どもの養育が求められます。
  ただ注意したいことは、子どもの様態を的確につかむことは大切ですが、子どもの一面を捉えて「愛着障害だ!」と早計に判断しないことです。
  愛着の絆は親子の互いの努力により修復することが可能といわれています。やみくもに情報に振り回されることなく、しっかりと子どもと向き合い子どもの状況を見極めることが大切ではないでしょか。
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